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原稿を催促する編集からの電話に対するフリーランスの対応 [解明選]

 出版業界にまもなく丸13年携わったことになる自分ですが、ようやく解りました。編集サイド、フリーランスサイドの双方に立った経験から、ようやく解ったのです。

 原稿を催促する編集からの電話に対するフリーランスの対応。

 これは完全に3つに分けられます。



1.出ない。とにかく原稿が上がるまで、ひたすら出ない人

 ナンバーディスプレイのなかった昔は、それこそ誰から掛かってきた電話もすべて「編集からの電話だ。恐いよぉ」となり、布団に包む、ないし電話のコードを抜く、下手するとハサミで切るなんて行為にまで及ぶ人。
 今や携帯で名前が表示されるため、ピンポイントで出ないことが可能に。ただし、電話が掛かってきた事実をそれで知ってしまうのが恐いため、締め切りが過ぎた時点で「出られないグループ」に分類。電話が掛かってきても音やバイブレーションが鳴らないようにして、難を逃れるという技を駆使します。
 出ないことに対し、「電話なんか出ねぇよ! バーカ!!」的な発想は一切なく、ひたすら締め切りまでに原稿を上げられなかった自分を非難し、落とし込み、落ち込み、原稿を書く状況じゃないほどに落ち込み、結果、より一層、原稿が遅れるという負のスパイラルに堕ちていきます。
 その対応策として、自分よりも遅い人を探して安心するという技を使い、なんとかやり過ごそうとすることも。
 夏休みの宿題でいうと、8月28日くらいになってようやく「やっべ〜」となり、でもダラダラと過ごした結果、31日も過ぎ、とりあえず9月1日〜3日くらいまでは風邪だと言って休んで、布団を被りつつ無理矢理仕上げるタイプ。
 自分の近辺では、パチ関連のO氏、裏関連のO氏などが当てはまります。


2.基本出ないが、編集がわりと焦り始めるタイミングで出る。でも、ウソをつく人

 1の人は編集が「明日下版なんですけど! 先生!!」って留守電に入れたりメールを送っても、皆目返答がなく、正直生死が心配になるくらい連絡が取れませんが、2の人は「明日下版です。連絡をください」までいくと、さすがに連絡は取れるようになります。でも、ウソをつきます。
 それも“身内が病気”という、べったべたのウソをつきます。
 慣れた編集になると「はいはい……でも、まあ、これで書き始めるはず」と、ちょっと安心します。
 ウソをついた方も「よっし、これで12時間は引き伸ばせたぞ!」となります。
 この段階での、このタイプが引き伸ばせる時間はなぜか12時間です。なぜか。
 以上のやりとりを見ると、まあ、双方よかったとなってますが、実は意識に大きな違いがあります。
 このタイプの場合、割りと本気で編集を騙せているって思っている輩が多いです。母の病気→嫁の病気→子どもの病気→母の病気、と、完全にローテーションになっていることに本人が気付かず、マジで気付いておらず、「いやぁ〜、今回も巧みな言い訳で、なんとか切り抜けたよ〜」的なことを言い放っています。
 フリーと編集、双方から上述した内容を聞いたことが数回あるので、間違いないでしょう。
 そのくらい自信過多のファンタジスタじゃないと、フリーランスなんてヤクザな商売を続けられないのかもしれませんけどね。
 夏休みの宿題でいうと、8月29日に母親に「宿題終わったの!」と聞かれて、「あと1個だよ!!」とキレた後、慌ててやり始め、でも31日には終わらず、先生に「家に忘れました」とウソをついてやりすごせると思いきや、「じゃあ、取って来なさい」と言われて引き返せず、とりあえず学校出たけど家にも戻れないので土手かなんかに行って石を投げたり。そうしている間に夜になったけど、やっぱり帰れず。終いにはご近所総出で探した結果、河原で泣いているのを発見。親に「よかった〜」って泣きながら抱きつかれ、宿題のことはうやむやになってハッピーエンドになってしまうタイプ。
 競馬好きでワイン好きな作家のG.T.さんはこのタイプだそうです。


3.電話には必ず出て、「終わってないけど、何か?」と開き直る人

 締め切りをちょっと過ぎた辺りでの、お伺いの電話。いうなれば、社交辞令と言っても過言ではない段階での電話にもすぐに出て、「終わってないよ。で?」と、「お前、この段階で何電話掛けてきてんの? お前もいろいろと準備が遅れてたよな? その分のロスタイムを考えたら、このくらいの遅れで電話を掛けてきてんの、おかしくね? 何様? むしろ、お前、何様?」と、まあ、言ってしまえば逆ギレ的な「終わってないよ」を軽々とくり出してくる輩。
「終わってないよ」とハッキリ言われれば、まあ、待つこともなく。連絡取れずに待つストレスを抱えるよりマシだと思えるが、それもホントギリギリで、埼玉辺りの印刷所の所長クラスの人から直電が不意に掛かってきて出ちゃったら、「この輪転機、あと何時間止めておけばいいですか?」的なイヤミを散々聞かされている夜中のロンリー編集部から電話したところ悪びれることなく「終わってないよ」とか言われたなら、それは、もう、どうしようもないっていうか、そこはむしろ「パソコンが飛んじゃって」とかウソをついてくれれば、印刷所にも「ライターが『パソコンが飛んじゃって』って言っているんですよ」「それ、ホントなの」「いや、まあ、ライターがそう言っているんで。ホント、すみません。今からパソコンを持っていって書かせますんで」くらいのことも言えるのに、「終わってないよ」なんてホントのこと言われたら、俺がウソをつかなきゃならないってこと? そこまで編集はやらなきゃならないのかっていうこと? ウソも方便っていうじゃん! そこはむしろウソをついてほしいじゃん!!
「ホントのことを言われて傷つくことだってあるんだよ。ウソをつく優しさもあるんだから」って女に言われたことがあるのは間違いありません。
 夏休みの宿題でいうと、8月30日、31日をフル稼働。しかし全部終わらせることはなく、納得するところまで終わらせ、9月1日は悠々と登校。終わってない宿題に対して怒られても、「その宿題をやることが俺の人生に必要と思わなかったからやりませんでした。誰にも迷惑、掛かってないですよね? 俺がその宿題をやらない分、その分野に関して馬鹿になった以外、問題ないですよね? 俺だけの問題、ですよね?」と開き直り、結局補習も一切受けずにやり過ごすタイプ。
 このタイプに当てはまる人は……俺! 正直者で何が悪い!!


 はい、以上で〜す。さようなら〜……ん!? それ以外にもいるだろうって? 大体、上の3つには締め切りを守っているヤツが一人もいないじゃないかって?



 いねぇよ。そんなヤツ。


追伸:締め切り守れるなんて甲斐性のあるヤツは端からサラリーマンをやっていますのであしからず。注目すべき、3種に共通するポイントは、「それでもケツは合わせてくる」というところであることを知ってください。ちなみに電話に出ない上に、その番号は現在使われておりませんとなり、結果、本気で落とした人のほとんどは実家で稼業を継いでます。……ていうか、なんか、このくだり、日記やブログですでに2回ほど書いていて、今回が3回目くらいのような気がしているのは、気のせい? むしろデジャブ? これからアルツハイマーになって(←不適切な発言なので撤回いたします)、何度も同じ事を締め切り前に書き続ける予兆? つーか、こんな長文書いている暇あったら、原稿を終わらせろって? これが終わってるんだよね! イエス! 俺、フィニッシュ! だからこそ、こんなにご機嫌な文章を書き殴ってんだよね!!……ご機嫌? どこ?


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ぱん

ケース3ぽい感じで正直に「終わんないです、どーしよう」と編集に泣きつき、締め切り伸ばしてもらった日に、父が死んでしまいました。なので「あの、父が亡くなりまして。今から実家帰んなきゃいけないんですけど」と電話したら「あ、そーですか。じゃ明日には下さい」とあっさり言われました。
や、まあ嘘っぽいスけどホントに死んでっから!
と言ったところで締め切りはそうそう動かず、父の亡骸を前に楽しげな原稿を書き上げました。
それ以来、原稿はなるべく早く書くように…したいけど、やっぱ書けませんよ! 書けねーもんは書けねー。だから、電話には出ないことにしてま〜す。
by ぱん (2007-07-23 01:48) 

おおとじま

俺の場合、まだ全然手をつけていないのに「今やってます。え〜っと、まだもうちょっとかかります。ごめんなさい。」って感じで、そば屋の出前の「今出ました」的な反応でしょうか。締め切りなんて編集側がサバ読んでこっちに伝えてるんですから、本当のデッドラインなんてまだまだ先にあるはず、という思考が働くのが主な要因です。
それを察したのかどうか、最近よく仕事をする編集さんからは本当のデッドラインを伝えられるようになりました。もちろん、ギリギリまで手をつけません。

ちなみに、夏休みの宿題は、夏休みが終わってからまとめて手をつけるタイプでした。
by おおとじま (2007-07-23 05:03) 

いのっち

で、〆切守らない人に限って、
筆がたつ・原稿がステキ、という変な法則もあるですね。

両立できる人は、あんまり会ったことナイんですが、贅沢な希望?


はい、待ちます。待ちます。待ちますよー。
by いのっち (2007-07-23 09:51) 

ガス

俺は2番

志茂田景樹は3番
by ガス (2007-07-23 17:26) 

モンタンハァハァ

4番です!

半年ぐらい携帯を客都合にして引き伸ばし、そのまま使ってます。
流石に、もう誰も誘ってくれません…

この前の成績どぅでした!?
by モンタンハァハァ (2007-07-24 00:17) 

ウエノミツアキ

>ぱんさん
そう、書けねーもんは書けねーですよね。でも、電話には出てあげてください!(←なんで俺が頼んでる?) なお、亡きお父様のくだり、爆笑してしまったことをここに告白し、お詫び申し上げます。

>おおとじま
ボクも、編集もやっていることで、デッドラインを完全把握しているのですが(←見誤ることも多々)、そのことに対し担当編集は「厄介だ」と嘆いているそうです。残念ですね。ちなみに夏休みの宿題は夏休みが終わった時点でただの宿題になっているので注意!

>いのち
待てば海路の日和あり(←てきとう)

>がす
うん。知ってる。志茂田景樹<確かに、なんかそんな感じ

>モンさん
なぜ換えないのか……いや、わかるような気がする。この前の成績は30本負けですが、満足度は100本勝ちです!(←依存症になり気味)
by ウエノミツアキ (2007-07-25 09:32) 

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