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見知らぬ8人が真っ暗闇散策体験 [感想選]

前日、やる気なく終わらなかった原稿を一気に書ききり向かったのは、
真っ暗闇の中を探索するというイベント=ダイアログ・イン・ザ・ダーク。
http://www.dialoginthedark.com/

行く前に知っていたことは、光のまったくない暗闇を、視覚以外の感覚、
聴覚、触覚、嗅覚、味覚を使って散策して行くのだろうということ。
まあ、それだけでもかなり魅惑的なので初日のチケットを押さえていたのですが、、、。

夕方、現場に行く。青山辺りの小洒落たイベントホール。
そのイベントに参加するにあたっていろいろなルールが設定されており、
・光を発するものを持っていてはいけない。
・蓄光塗料を使っているものを身につけてはいけない。
・人と触れることがあるので、露出の少ない服を着る。
・転ばないように脱げやすい靴を履かない。
・人の足を踏んだときに痛かったり傷つけるような靴は履かない。
……等々。

結果、夏なのに黒いロンTに長ズボン。久々にスリッパやサンダルの類ではなく靴を履いたウエノが会場に到着した。同行する嫁も同様の格好。都内は涼しくてよかったです。はい。

暗闇に出発する時間が決まっているので、しばしロビーで待つ。嫁が言う。
「あそこの人も一緒に行く8人のうちの1人かなぁ……」

そうそう。暗闇には8人1グループで行くのだった。
知っているのは嫁だけで、残りの6人は知らない人たち。
グループ行動するということは、暗闇だろうが明るみだろうが、絶対的にコミュニケーションを取る必要性が生じるわけで……考えただけで辛い(←人見知りっていうより、やや対人恐怖症っ気)。なのに、ちょっぴりドキドキしてんなよ、俺!!(←案の定、Mっ気)

いろいろ考えて、軽く鬱になったり、それで軽く気持ちよくなったりしながら、その辺にあったパンフレットを見ていた。すると、どうやら視覚障害者の方がアテンドとして案内役をしてくれるらしい。
つまり視覚障害者の方に引きつられて、全盲の視覚障害者と同じ世界=完全な闇を8人グループで散策するっていうことね。なるほど。それなら暗闇の方に関してはかなり安心。暗闇に関しては大先輩が連れて行ってくれるわけだからね。で、やっぱり拭えないのが6人の他人とのコミュニケーションに対する不安。

絶対に声とかで確認し合うんでしょ? 「ウエノで〜す! ここにいま〜す!」とか叫んだりするんでしょ?……(赤面)

期待と不安が入り交じり、渦巻きになってグルグルになっていると、「時間です」と呼び出し。
入口に向かうと、1人欠員の計7人が揃う。その時点で誰とも目を合わせられない。
この人らと暗闇で動き回るってだけで、やばいから! うわぁああああ!!
……って、落ち着いて。落ち着いて、俺。

係員に連れられて、最初の部屋に入る。そこはまだわずかに光が差し込む部屋。
そこに視覚障害者(……って、書いていると、なんかそっちの方が差別っぽく感じるから、以下、目くら)の女性と目くらの男性の計2人のアテンドが紹介された。姿はほとんど見えない。
次いで、やっぱり、7人の自己紹介となる。といっても名前だけ。本名は言わなくてもいい。
順に名前を言っていき、嫁の番。
「ウエノです、、、が、ウエノは2人いるので、私はウエノ嫁で」
なんか軽く笑いを取ったりしてる。そして、最後、俺の番。
「というわけで、もう1人のウエノですが、2人いるのでウエノ旦那で、、、いやいや、嫁が嫁って言っているから、俺はウエノだけでいいのか、、、じゃ、ウエノです。よろしくおねがします」
これまた、なんか笑いを取っているのだが、本人は相当つらいコミュニケーション。先が思いやられつつも、わくわくしつつも、、、。

全員の紹介が終わり、街で目くらの人が持っている白杖(はくじょう)が配られた。白い杖ね。
つまりはこれで障害物を察知せよとのことであり、すなわちガチで何も見えないんだよっていうメッセージである。
で、持って入る。俺、なぜか先頭。一番に入る。確かに暗い。入りきり、入口にあった遮光カーテンが完全に閉まりきると……

「真っ暗でーす! ウエノ、真っ暗でーす!!」

まあ、口に出して叫んでないけど、予想通り、真っ暗。目を開けても閉じても変わらない、真っ暗闇。視覚が完全に意味をなさない世界へ突入。で、歩けですって?……無理!!……と思いきや、そうでもない。アテンドの人の声のする方へ、杖で障害物がないか確かめながら、進めばいい。予想以上に簡単。障害物があったら手を出して高さを確かめればいいし、わからなかったらそちらに進まなければいい。まあ、アテンドの人が「次は橋を渡りまーす!」といった簡単なヒントを出してくれるから、構えが出来るってのもある。
あと、これは実際にやってみて気付いたのですが、土台がないけど張り出している障害物とかはぶつかる寸前に何かしらの圧迫感を感じるので、意外と避けられる。それは自分が発したり、誰かが、何かが発する音が反射した音で感じているのかもしれないけど、確実に感じる。その場所の屋根の高さ。部屋の大きさなども意外とわかる。
わかりづらいのは腰ぐらいの高さのもの。その高さにある手すりやトビラは、触ったりぶつかってはじめて気付くことが多かった。となると、その辺の障害物があると知ると、うしろの人にも教えてあげないと危ないよなぁってなり、結果、案の定、、、

「ウエノで〜す! ここにいま〜す! ここに手すりがありま〜す!!」

軽い羞恥プレイだよね。
そんなこと日常では絶対に叫ばないでしょ。
でも、ヌードモデルがそのうち脱ぐことに抵抗を感じなくなるのと同様、そんな叫びも恥ずかしくなくなっていき、

「ウエノで〜す! ここから階段がありま〜す! えーっと、1、2、3、4。4段で〜す!! 気を付けてくださ〜い!!」

なんてね。言ってね。すごくいい人になってるわけですよ。今思うと。(赤面)
ちなみに自分だけではなくて、他の人も自分の名前を言っては「○○でーす。立ちまーす」とかね、言うわけですよ。さっきまで他人だった人たちに向かってね。「鳥の鳴き声が聞こえまーす」とかね。で、アテンドの人が「そうですね。美しい鳴き声ですね」とかね。で、普段は基本的に他人を拒絶して生きているうちの嫁とかも、「なんか牛の鳴き声が聞こえない?」とか言ってね。それに対してアテンドの人が……あれ? 無視?

ま、それは幻聴だったんですけどね。そりゃ、アテンドの人も無視するわってね。残念な話。

さらに「なんか獣の臭いがする!」とか言っちゃってね。それもアテンドの人が無視してて……

ま、それは俺の臭いだったんですけどね。残念な話。

で、「……えっ? もしかして俺?」って、俺って言ったら、アテンドの人が「わはははっ」って。バカウケしてて、「ごめんなさい! 本気で受けちゃった!!」だって。

えーと、マジで俺の臭いなの? ねぇねぇ?

ま、そんなこんな会話をしていくうちに、やけに親近感を覚えちゃったりして。正直、最初の自己紹介のときにみんなの顔を満足に見ていないので、どんな容姿の人と一緒に行動しているのかまるでわからないけど、名前と声と行動の具合となんか雰囲気だけは感じられて、そこから頭の中で容姿を勝手に作り上げて、その人らとグループで行動してんだよね。最後の方はなんとなく仲良しになっていたりして……あれ? もしかして、見知らぬ人とのコミュニケーション障害が解消してる? これで、解消しちゃった? マジで? でも、全然、苦痛じゃない! 解消しちゃったかも! 克服しちゃったかも! やった! 俺、やっちゃった! わーい、わーい!!

とか1人で盛りあがっていた辺りで、約1時間ほどの暗闇探索終了。
出口の光がすごくまぶしい。しばらくまともに目が開けられない中、椅子が円形に並べられたスペースに移動させられた。たぶん、俺、笑顔だったと思う。初対面の人とわりとまともにコミュニケートできたから。盛りあがっていたから。

で、いろいろと感想を述べ合う。
その声で誰が誰だったのか、確認できる。俺が最もコミュニケートしたTさんは目の前に座っていた。
互いに互いを確認できた瞬間があり、目があった。Tさんはわりと想像通りの人。そこでアテンドが言う。
「互いにどうですか? 暗闇で想像していた人でしたか?」
Tさんが言った。
「ウエノさんはすごいやせている人だと思ったんですよ! でも……あっ、いや、良い意味で安心できたっていうことでして」

デブウエノ、明るみにて再び、心閉ざす……。

追伸:他人の目が怖いんですね。俺って……ちっ、この世が闇で覆われてしまえばいい! なんて思ったりして、勢いで目を潰してみようかななんて一瞬考えましたが。帰りの電車に乗るとき、改札から吊り輪をつかむまで暗闇シミュレートしたところ、恐らくどうにかなるってことはわかりましたが、実際に見えないとなると、ここから見えている中吊り広告も見えないのか……って、考えたら、そっちの方が遙かに死にたくなるって思いました。それはイヤだって思いました。そんな思いをしながらも生きている人のつらさを考えたら……。だから、次からは街で白杖を持った目くらの人を見かけたら、前よりちょっとだけ優しく接するだろうって、感じました。(←好感度アップ狙いのオチ)


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コメント 9

じゅん

これすごく面白そうですね!!
普段かなり視覚に頼って生きているので貴重な経験ですね。
そういえば先日、駅で白杖を持ったおじいさんがいましたが普通にすいすい階段を下っていかれたので驚きました。
視覚以外の感覚が研ぎ澄まされた集大成なのでしょうか。
私は怖くて無理そうです。
by じゅん (2006-08-03 02:29) 

ウエノミツアキ

>じゅんさん
前に何かで見たか聞いたかした話なんですけど、
最初の頃は目が見えていた目くらの人は、障害物の位置関係を見えていた頃のビジュアルでつなぎ合わせるそうです。でも、生まれたときから見えていない人は……。
先天性目くらの人の脳内を見てみたい……。
ま、先天性赤緑色弱である俺が見ている世界もお前ら見てみたいと思っているだろうけどな……つーか、逆に普通に見えている人の世界を見てみたい……はぁ、意識そのままで輪廻しないかなぁ……。
by ウエノミツアキ (2006-08-03 02:59) 

ひろし

味覚も敏感になるのかねー
何食ってるか判らなくなりそうだけど
バーでドリンクは出てから?
by ひろし (2006-08-03 03:06) 

ウエノミツアキ

>ひろし
中。詳細はなんとなく控えるが、注文をミスった。実験失敗。それだけのためにまた行きたいと思っているほど。
by ウエノミツアキ (2006-08-03 03:11) 

ひろし

えええなにそれ。
気になる!!
by ひろし (2006-08-03 03:13) 

じゅん

やっぱりあの日おじいさんに接触すべきでした。
でも今思い出すとただの杖をついたおじいさんだったのかも。

意識そのままで輪廻って憧れます。が、ちょっと怖いですね。
ちなみに私はウエノさんから見た世界というか、ウエノさんの脳内が見たいです。
by じゅん (2006-08-03 03:18) 

ウエノミツアキ

>ひろしさん
じゃ、こんど、お話します。
>じゅんさん
じゃ、こんど、お見せします。つーか、わりと見せてます。ここで
by ウエノミツアキ (2006-08-03 03:34) 

ひろし

楽しみにしてるよ!
出来れば成功と合わせて聞きたい。
食いしん坊として・・・
by ひろし (2006-08-03 03:46) 

じゅん

ありがとうございますw
by じゅん (2006-08-03 14:17) 

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